OVER SAMPLING (続)
July 9th, 2009
いつか試聴したいと待ち望んでいたD/A convertorがデモで拙宅に到着した。
このD/A convertorは最新のスイッチング電源を備え、なんと2608回ものOver Sampleを行うのである。その上に独自のデジタルフィルターを通り
完璧なまでのノイズシェイピングを可能にしているのである。
一般的にD/A convertorにはプロユースを前提に設計されたPRISM SOUNDやLAVERY等、遅延がなるべく少ない仕様に設計されている分
本来の「音色を創る」と意図に欠けた製品が多く、ただ単に「高精度な道具」としての印象が強くどれも余り魅力的ではなかったが、このCHORD ELECTRONICS QDB76は
プロ仕様にはない「音の個性」を非常に強く感じられ非常にわたし好みの音がする。
なるほど、このD/A convertorでいろいろなソースを聞くと「良い録音」は素晴らしい音で再現される。最近の銘録音CHRIS BOTTI in BOSTON (live in Boston Hall)
はステージ上の電源ノイズからフロアノイズまで聞こえすぎる程、あたかも中継車の中でモニターしているように生々しく再現される。
自分がグラミー賞受賞に片棒かついだ2000年の録音David SanbornのINSIDEは当時のMIX収録先である1/2″アナログテープのヒスが懐かしく思い出させる。
最近うちのレーベル/SONYにライセンス契約したRENDEZ VOUS IN PARISはBLUE SPECなのでCDからの読み取りが良く音も滑らかだった。
しかし、興味深いのは80年代の作品、特に銘録音とされるDonald Fagan/Nightflyは期待していたほど素晴らしい音ではなかったのはCD制作の行程での進化が今日まで進んでいなかった事が大きな理由であり、これはアナログ盤の方が断然素晴らしい。
そのほかデジタル・リマスターされたLED ZEPPLINや、最新のMELODY GARDOT~等、最新のデジタル時代のソースを見事に再生する。
古いものもそれなりに素晴らしく再生されるが、新しく良い音で収録された作品を更に高いステップに持ち上げる。
このデザイナーは音楽の事情を非常によく判っているんだと思う。
そして最後に実際にAES/EBUとしてPRO-TOOLSの出力を聞いてみるとこれがまた、たまげる程良い音がする。
まず最先端のノイズシェイピングによりPRO-TOOLS独特の固い団子のような音がしない。すべての音のソースが何層にも整頓されてそのソースに合った音に解像されて
再生されているのが目に見えるようになる。
結果、全体にストレスのないアナログ正弦波となってアンプに送り込まれるのでスピーカーに全く負担のない大出力が得られるので長時間の作業で
疲れる原因になる歪みがまったく無いので仕事もはかどる。(ちなみに拙宅のスタジオのPOWER AMPはCHORD社である)
このD/A convertorにはスタジオ用にはあり得ないバッファー機能がついている。2〜3秒くらいの遅延があるのだが、これを通すと更に完璧なノイズシェイピングが行われるので
再生音は信じられないくらい解像度が増す。フェーダーやミュートを行う作業には不適だが、EQやREVERBをかける等等の作業には素晴らしく効果がわかる。
実際に世界レベルのマスタリング・ハウスではこのくらいのバッファーを組んで作業されている事を実感していたので、これはデジタルミックス時代には不可欠だと改めて思った。
解像度の高いモニター環境に身をおいて作業するのとそうでないのとでは結果は明らかである。足りない部分がまったく見えないからである。
デジタル・ミックスの一番の難しさはEQの度合いやREVERBの分量を決めかねるところにある。必ず多すぎるか、少なすぎる。これは解像度の問題に起因している。
アナログの場合はツマミの位置から伝わる手の感覚を元に他の音との馴染みを実際に聞きながら調整できるのだが、デジタルの場合はいかんせん数値の組み合わせ以外なにものでもない。
よって最後の「音になる」部分の精度が低ければその伝達量は50%にも満たないかもしれない。
だからこそデジタルのデーターをいかにアナログらしく聞かせるかとという最大のテーマがD/A Convertorのデザイン、使命であるという大変興味深い結果だった。
ちょっと見た目も映画SPACE ODDESY 2001(2001年宇宙の旅)に登場するHALのようでイギリスらしいユーモアも感じる。
そのうちに何のソースが入力されていなくても勝手に唄いだすかもしれない。……I can sing it for you….
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